俺はゴルディールと共に地下道を歩いていた。
身につけた鎧は所々に亀裂が走り、その中に着込んでいる綿入れも裂けている。
負った傷は一応治癒の魔法で塞いではいるが流した血は戻らない。
ボロボロの綿入れを染め上げている朱は俺の流した血の多さを物語っていた。
今は背負っている両手剣どころか左手に持つ松明すら取り落としそうに重い。
なぁ、ゴルディール。この地下道の先に敵がいたら多分死ぬな俺達。
「いや、スキーヴァー(ネズミ)が飛びかかってきても死ねるぜ」
冗談になってねぇな。
今から半日ほど前、通りがかった街道沿いの砦から矢を射かけられた俺は
愚かな山賊たちに報復するため隣の岩棚から強引によじ登り砦に潜入した。
砦は唯一と思われる正門に頑丈な格子があったため外部から攻め入られるとは
思わなかったのだろう。俺の奇襲で六人ほどいた山賊は絶命した。
俺が内側から格子を開けて砦の中にゴルディールを迎え入れた時、あんなところ
からよじ登るか普通と言いたげな苦い表情だったが登れたんだから仕方がない。
しかしここからがまずかった。
岩肌に寄りかかるように作られていた砦の内部はかなり広大な規模で、
最初は楽勝だった俺たちも奥に進んでも進んでも終わりのない地下区画と
そこに大量に潜んでいた山賊たちとの戦闘で徐々に疲弊していった。
少し前に山賊の頭と思われるオークの戦士をなんとか倒してこの地下道を
見つけたのだが、もしこの先にまだ山賊の残党がいたら真剣にまずい。
後悔の念に塗れた俺の顔を柔らかく風が撫でた。外に通じているのか?

外はすっかり夜の帳が降りていた。地下道の出口の先では三人の男が野営の
準備をしているところで、俺達の姿を見た一人の男が話しかけてきた。
「そこのお方がた、旅の冒険者と見込んでお助け願いたいのですが・・・」
男の名はストーリオ。俺達が潜入した砦-トレヴァの監視所の責任者だ。
領地の勤めで隣の自治区まで出かけた留守を山賊どもに狙われてしまったらしい。
それなりの人員を警備に残していたらしいが山賊の規模が予想を上回った。
・・・まぁ、確かに小さな町くらいなら襲えそうなくらい人数がいたなぁ。
ストーリオは俺達が歩いてきた方角を指してこの先に秘密の地下道があって
そこから砦の中に潜入できると言った。少人数で入り込んでせめて自分の妻は
助け出したいと傭兵を2人雇って戻ってきたところだったが、まだ心もとないため
俺たちにも手を貸してほしいとのことだった。
・・・ああ。
隠しても仕方がない。俺はストーリオにすべてを説明した。
その砦に昼間潜入して中にいた山賊どもを殲滅したこと。正門は開いていること。
そして・・・途中、地下のワイン貯蔵庫で女性とその護衛の兵士と思われる死体を
見つけたこと。おそらくあれがあんたの・・・
俺の話を聞いてストーリオは膝から崩れ落ちて号泣した。
その姿を眺めつつ俺もその場にへなへなと座り込んでしまう。
まったく・・・俺も泣きてぇよ。
>>>記事の続きはこちら